■中小企業地域資源活用プログラムの創設
地域の応援に向けて、経産省・中小企業庁は「中小企業地域資源活用プログラム」を創設する。地域から大都市圏へ。そして、世界への売り込みを目指す。「市場」を強く意識した支援策を投入する。
地域資源を活用した新事業に対する支援の意義は、地域間の格差が背景にある。大企業を中心とする景気の回復感は地方の中小企業にまでは届いていない。大都市圏以外での回復の遅れが目立っており、公共投資に依存しない自立型の経済構造への転換が急務になっている。
そこで価格競争に巻き込まれない、消費者に強く支持される新サービス、新商品づくりなど、地域の創意工夫が求められてくる。その一つの有効な素材になるのが地域にある優れた地域資源だ。これをいかに第三者の手を借りて、地域の熱意により磨き上げるか。国はプロジェクトの企画段階のサポートから始まり、販売などに結びつける「出口」戦略まで支援するスタンスだ。
「中小企業地域資源活用プログラム」の創設により、国は地域資源を活用した新事業を強力に支援し、5年間で1000件の新事業創出を目指す目標を掲げた。同プログラムは地域のやる気に火をつける仕掛けともいえる。経産省は07年度の予算要求で総額101億円を計上している。経産省はじめ総務省、国土交通省、農林水産省など6省連携の施策にも位置付けられた。
■地域資源とは
法案では地域産業資源(地域資源)としている。定義の要約は(1)地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物または鉱工業品、(2)特産物となる鉱工業品の生産にかかわる技術、(3)地域の観光資源として相当程度認識されているもの-の3点が明記された。地域資源の具体的な形は多岐にわたる。基本的には地域の中小企業らが有効に活用する素材であり、皆が知っているものが考えられる。
地域資源を活用した中小企業の取り組みは大きく分けて(1)産地技術型、(2)農林水産型、(3)観光型-の3類型となる。全国にはこの3類型に当てはまる地域資源を活用した果敢な挑戦がすでに動いている。キーワードは「これならうちでもやれる」だ。
《具体的事例1・産地技術型》
山形カロッツェリアプロジェクト(山形県)では、世界的に著名な工業デザイナーが中心となって、03年度に鋳物、木工、繊維などの県内の優れた職人が高品質の商品化を目指す「山形カロッツェリア研究会」がスタートした。06年1月には選抜した5社の製品群を「山形工房」のブランド名で、海外の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。多数の商談が進行中だ。
《具体的事例2・農林水産型》
千葉県富浦町(現南房総市)は主要産業の観光関連産業が衰退し、91年には観光客が20万人に激減。そこで、とみうら(南房総市)は特産品の枇杷(びわ)を活用したソフトクリームなどの開発や「南房総いいとこどり」と題した観光情報の発信などを総合的に展開した。現在は観光客数は年間100万人以上という。とみうらのプロジェクトは年商6億円(利益約1,500万円)に発展している。この事業化を契機に地域内に同様の事業を行う加工事業者なども生まれている。
《具体的事例3・観光型》
熊本県南小国町にある黒川温泉。10年ほど前までは全国に数ある温泉街の一つに過ぎなかった。危機意識が高まるなかで地元・温泉旅館の新明館が中心となり、敷地内の岩山を掘り抜いた露天風呂や樹木整備などを行い、独特な雰囲気の温泉郷を実現した。これを機に地域内の温泉旅館が協力して、地域一体となった景観づくりが進んだ。こうした取り組みにより現在、年間観光客数は約130万人を超えている。
■支援の枠組み
地域資源を活用した中小企業の取り組みの分析では、事業を成功に近づけるには市場に精通した専門家との偶然の出会いがきっかけとなるケースが多いという。そこで、それぞれの専門家と地域が効率的に出会い、新事業に乗り出す環境の整備が重要になってくる。
中小企業地域資源活用促進法案は07年2月に通常国会に提出された。新法の施行は早ければ6月が見込まれている。都道府県が策定する「基本構想」の認定は7月にもスタート。これを受けて、中小企業は事業計画(地域資源を活用し、新商品開発を行う計画)を作成し、国は8~9月にも認定を行う見通し。認定企業には補助事業、政府系金融機関による低利融資などの各種支援措置が用意されている。
■主な支援施策
「中小企業地域資源活用プログラム」の基本的な考え方は、ビジネスアイデア構想の段階→具体化の段階→事業実施段階→事業化の成功・ブランドの確立を目指す。各種の支援措置は各段階ごとに用意される方向だ。補助金はじめ政府系金融機関による低利融資、設備投資減税などは新法の認定を受けた中小企業が対象になる。
《地域資源活用売れる商品づくり支援事業(補助事業)》
新法による事業計画の認定が必要になる。地域資源を活用して新規性の高い新商品開発などに取り組む中小企業に対して、試作品開発、デザイン改良、展示会出展などにかかわる費用の一部を補助する。初年度は助成規模2,000万円程度で、約200件の採択を見込んでいる。補助率は3分の2としている。07年度予算で41億円を計上している。
《市場志向型ハンズオン支援事業(委託費)》
全国10ブロックに支援拠点となる事務局を設置する。事務局にはマーケティングなどに精通した専門家が常駐。地域中小企業の相談に応じ、市場調査、商品企画、販路開拓、事業性評価に関するアドバイスなど徹底したハンズオン支援を行う。地域資源の事業化に挑戦する企業、連携して新事業展開に乗り出す企業などがサポートの対象。有望案件についてはマーケティング、金融、デザイン、知財などの専門
家で、個別支援チームを結成して、サポートする体制も組む。07年度予算で20億円を盛り込んだ。
■「地域中小企業応援ファンド」創設
地域資源を活用した新たな取り組みを掘り起こすために、予算とは別枠で新たに「地域中小企業応援ファンド」も07年度に立ち上がる。中小企業基盤整備機構が持つ投融資機能を活用し、今後5年間で2,000億円程度の資金枠を確保して中小機構の新事業で取り組む。「中小企業地域資源活用プログラム」の一環となる。
地域中小企業応援ファンドは、地域資源を活用した初期段階の取り組みなど、新事業のシーズ(種)を発掘する「スタート・アップ応援型」と株式公開を目指す地域の成長企業を支援する「チャレンジ企業応援型」の二つのメニューを用意。ともに都道府県や地域金融機関が参画できる枠組みになっている。
とくにスタート・アップ応援型は地域資源の発掘に力を入れる。中小機構がファンドを組成する都道府県に対し、ファンド組成に必要な資金の一部を無利子で貸し付け、都道府県を通じてファンド管理者(都道府県から拠出を受けている公益法人など)に無利子で貸し付ける。中小機構はファンド総額の8割を上限に負担する。ファンドの運用益で地域資源を活用した中小企業の取り組みに対して助成する仕組み。中小企業地域資源活用促進法案の成立・施行後に同法に基づいて都道府県が策定する「基本構想」の中に、ファンドによる支援事業計画を盛り込むことも想定される。
■施策の普及へ
「中小企業地域資源活用プログラム」の存在を全国津々浦々に知らせるのが当面の課題だ。同プログラムの推進で、関係6省がスクラムを組む関係省連絡会議では具体的な連携方策の一つとして「地域中小企業サポーターズサミット」の開催が盛り込まれた。07年1月には地域資源活用の地域リーダーら約140人が、国から地域中小企業サポーターに任命された。地域資源を活用した中小企業の新たな事業展開を後押しするのがサポーターの役割だ。地域資源活用のイベントなどで、講師などに派遣される。
3月から全国10地域で「地域中小企業サポーターズサミット」が順次開催され、地域資源活用の気運が徐々に盛り上がりつつある。しかし「中小企業地域資源活用プログラム」の浸透はこれからが本番だ。6月下旬には東京でサポーターズサミットの全国大会も予定されている。新法の施行もにらんで、今後、さまざまな準備が各地で進む。
地域のやる気がどれだけ日本に存在するのか。国の仕掛けを大きなテコに、新しい祭りが期待される。
㈱沖縄ヒューマンキャピタル(2007.5.18)
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